
着付け道具の思想背景
この記事は、巷にあふれる着付け道具を
一体、何を使えばいいのか悪いのか?
着付け初心者が悩む疑問について書いています。
〇〇の道具は使いにくい。使いやすい。
コーリンベルトは使いやすい。使いにくい。
改良枕は使いやすい。使いにくい。
着付け道具の使い方、組合せについて個人の感想やお気持ちが
溢れています。
しかし、着付け道具の個別の使い方について個人のお気持ちや
感想などはあまりというか、ほとんど参考にはなりません。
なぜならば、着付け道具の選び方と組合せには
きちんとした思想背景があるからです。
衣服を着るということに技術が必要というのは、着物だけ
のものですが、この面白さが様々な着付け技術、着付け道具、
はたまた簡易着物や和洋ミックスなどさまざまなものを生み出して
きました。
着付け道具の使用には下記の大枠があります。
着付けは手順をどうするか?
補整をどう考えるか?
この二つの大前提をもとに
自装用(自分着物を着るための着付け道具)
他装用(人に着物を着せるための着付け道具)
古典(腰ひもや博多の伊達締を使用し、クリップや改良枕を使用しない。)
※戦後の着付け教室が誕生する前の着付け道具
現代(クリップ、改良枕ほか器具を使い手順を簡略したもの)
補整(身体を円筒型にして着物姿をきれいにする技術)
補整をしっかりする派。補整を極力減らす派。全く補整をしない派。
という組み合わせから着付け道具が考案されています。
大前提として手順と補整について確固たる理論がない方の
感想やお気持ちはほぼ参考になりません。
ここで注意しないといけないのは、他装用の着付け道具で
成人式の着付けの際、着付け道具がセットになっていて、
しばらくしてから着付けを習う際、使えると思って持参した
着付け道具が使えない。と否定された。という意見もありますが
他装用で自装には使わない着付け道具も存在します。
着付けを指導する場合は、自装の道具と他装の道具の区別、
教室によっては、それを教室の解釈で分けているところもあるので
誤解のないよう、説明することは大事なことです。
※着付けを本格的に習い、人に着せることを目指す人は、どんな着付け道具でも
使えるようにならないといけません。当日依頼の際に、着付け道具のせいには
できないので。
業界関係者が注文するカタログを見ると
お太鼓枕42種類
前板 30種類
伊達締め 8種類
もあり、これは一例です。
着付け教室オリジナル
着付け小物専門店独自開発商品
個人のアイデア商品
数を上げればきりがありません。
その時代に流行って、今は使用頻度は少ない。
特定の着付け教室だけが使用する。
という着付け道具もあります。
オリジナルの着付け道具で簡単に着物が着ることができるという
着付け教室や着付け道具販売業者、個人の考案者にいたるまで
その数は無数です。
青華は、汎用性重視なのでなるべく市販の着付け道具で
身体が整う着付けを指導しています。
着付けの手順、補整に対しての考え方は様々ですが
残念ながら着付け教室に限って
令和になっても合理性が、
前時代の合理性のままが多いようです。
戦後着付け教室が全盛時のころは、補整をガチガチに決める。
着付けが流行でしたが、
洋服を見ればわかるように世界的にも身体に負担をかけない
方向性で進んでいます。
補整が全く必要ないとか極論を主張する人は要注意ですが
これからの着付けは、なるべく補整を減らしながら
着姿がきれいに見える着付けを目指していくべきでしょう。
一方、きもの販売店に見られることがありますが、思想背景も何もなく
その組合せでどうやって着物を着るのだろう?
という着付け小物の品ぞろえも見受けられます。
思想背景に基づいた着付け道具の組合せは、
基本、相生(お互いを伸ばす)ようにできていますが
組合せによっては相克(お互いを相殺する)という組合せもあるので
注意が必要です。※個別として使いやすくても、全体と調和しない。
個別の着付け道具を理解するより、着付けの思想背景を理解することが
大事です。
◇まとめ
長くなりましたが、着付け道具にはそれぞれ思想背景があり、個別の着付け道具の
使い方について感想やお気持ちを述べても参考にならないこと。
着付け教室でも前時代の合理性のまま現代にいたっていること。
着付け道具の組合せは相生が基本であることを書きました。
SNSの進展で個人の主張が発信しやすくなりましたが、
忙しい現代において情報の渦に身を置いてしまうと
ただただ時間だけ消費して何も身につかない。
スマホに魂を吸われるだけになってしまいます。
限りある時間を有意義に過ごしていきたいですね。
全6回身体整う着付け講座
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