春一番の風が吹き、気候もほんの少しづつですが穏やかになってきました。
まだまだ緊急事態宣言のさなかではございますが、一日も早く
着物でお出かけができる行事を企画していきたいと思います。
さて、今回ご紹介する着物のコーディネートは着付け教室 青華きもの学院
助講師さんによる久留米絣とバテッィクの名古屋帯です。
久留米絣は江戸時代後期に井上伝さんという当時12歳だった
少女が考案した絣で久留米藩が産業として積極的に推奨しました。
現在は、福岡県の伝統工芸品に指定され、日本三代綿絣にも
数えられています。絣で素朴ながら様々な柄を表現されており
基本は綿を使用いたします。
今回、こちらに合わせた名古屋帯は、インドネシアに旅行に行かれた際
バティックの布を二枚購入し、和裁士であるお母様にお仕立てを依頼
されたとのことです。
バティックはインドネシア特産のろうけつ染で
別名ジャワ更紗とも呼ばれ、インドネシアを代表する工芸品の一つですね。
本来、帯として作られたものではないのですが、助講師さんの創意工夫で
名古屋帯として誕生いたしました。
これは、茶道で言うところの「見立て」という概念で自分がいいと思ったものを
解釈で茶碗や花入れ、その他、諸々の道具として使用するという
日本人が古くから実践してきた尊い美意識の一つでもあります。
今あるものを選んでコーディネートするということも、非常に面白いものでは
ありますが、「見立て」という行為はそれ以上に自分の美意識とセンス、解釈が
問われ、腕のいることだと思います。
自分の心の片隅に「見立て」という気持ちが備わってくると、街を出歩くとき、
旅行に出かけるとき、自分の前に現れる様々なものがより豊かになって見えてくる。
私はそんな風に考えています。
日々忙しさに追われ、ゆとりある暮らしが実践しにくい世の中。
偶然出会った布に思いをはせて、着物や帯へと仕立てていく。
そんな心のゆとりを大事にしていきたいと助講師さんのきものコーディネートを見て
感じた一日でありました。